野村誠氏が感想を書いてくれました!

野村誠氏が、自分のアルバム「カモシカの恋」の感想を野村誠のHPの日記に書いてくれました!

ピアニストの岡野勇仁くんから、CDが送られてきた。彼のソロアルバム「LoveOf Serow カモシカの恋」が完成したのだ。
 てっきりクラシックの曲を録音したのか、と思っていたら、岡野くんのオリジナル曲5曲と、バッハ(+ホーメイ)の6曲だった。

 岡野くんは、音楽が官能的であることを肯定的にとらえている音楽家で、よく歌うピアノを弾くし、彼自身も演奏しながら歌う、というか唸る。そのうなり声は、グレン・グールドキース・ジャレットなんかよりも間違いなく大きい。荒々しいうなり声と対称的に、彼のピアノの音色は、とても美しい。

 このアルバムには、彼の歌心の一端は見えるけれど、個人的にはスクリャービンの大曲などを官能的に弾ききる岡野勇仁も収録されていると、より嬉しいと思う。ぼくがプロデューサーなら、絶対、スクリャービンなんかも収録し、本人の弾き歌いなども収録したいが、、、。

 ファシズムや戦争への反省から、第2次大戦直後の現代音楽で、官能的な音楽を指向する人は出てこなかったと思う。メシアンみたいな信仰心の強い人とか、何か信じる物が強くないと、官能的にはなれない。疑ったり、分析したりする気持ちは、理性的になり、官能的な音楽を排除していく。
 そういう意味で、岡野くんのような官能的な演奏ができるピアニストは、現代において希有な存在だ。彼は何を信じるから、官能的な演奏ができるのだろう?
 アントニオ猪木を尊敬し、彼のプロレスのビデオから音楽の演奏の極意をつかんだという岡野くんは、非常に肉体派のピアニストだが、しかし、音が綺麗だ。官能的だから、音が綺麗になのは、当たり前か。
 とにかく、彼のピアノの音は、「情報」という感じが全くない。ここまで抽象化されない音を出す人も珍しい。機械には絶対出せないタイプの音だ。そんな彼は、機械嫌いではなく、テクノが好きで、トランスする官能的なサウンドを愛している。

初代ピアノ屋岡野勇仁 http://www.11piano.com